ひとり暮らし

雑記。日々思うこと。

欲望の持ち方その1 ―わが人生処方―

わが人生処方 (中公文庫)

わが人生処方 (中公文庫)

 

 

 吉田健一はこの本の中で、「人が生きていく上では、各種の肉体的欲望が強いことが大切だ」と述べている。それもただ食う為、などと抽象的なことを言っているのではだめで、あそこのトンカツが喰いたいだとか、あそこの生ガキを5人前喰うだとか具体的なものでなければだめだという。至極当たり前なことを言っているようだが、このデジタルに染まったご時世、こういった感覚をとかく失いやすくなっている現代人には必須な感覚だと思える。人はとかく予測のつかない未来や、目に見えない物事に関して考えすぎてしまうものだ。

 

【これから日本経済は衰退の一歩だ。ひたすら貯金をしておこう】

【あの人はわたしのこと本当に好きだろうか。それらしい素振りは見せていたけれど……】

【子供の行く末が心配だ。なんとか頑張って私立の良い学校へ入学させよう】

 

 長期的な人生計画はとかく挫折しやすいし、変更する確率も多い。吉田氏はもっと単純に「今」に集中することを勧めている。勿論、人の努力をバカにするつもりはさらさらない。ただそれが、ポジティブな理由であればいい。

 

【家族が年を取っても仲良く暮らせるように今から貯金をして家を改築しよう】

【あの人が私の恋人になってくれたらうれしい。もし振られても、この経験はわたしの素敵な思い出にしよう】

【わが子には幸せになってもらいたい。子供の可能性をたくさん広げてやるために良い学校へ入学させよう】

 

 長期的な計画に向かうためにはどうしたらいいのか。それはもっと単純にあそこのトンカツが喰いたい。あのバッグや腕時計が欲しい。異性にモテたいなどわかりやすい欲望を持つところから始めるのがいいのではないか。ただ問題は、その欲望というものを持てないでいる人々が大勢いるということだ。