ひとり暮らし

雑記。日々思うこと。

日常学事始

 

日常学事始

日常学事始

 

 

 彼は中央線高円寺に住むフリーライターだ。力の抜けた文章が実に心地よく、読んでいた楽だ。この楽という感覚は実に大事なことだ。背伸びせず、かといって低くもなりすぎず、自然体でいるから無駄なエネルギーを使わずに済む。

 人はとかく進歩というものにどん欲だ。一生懸命に背伸びして、その限界を伸ばしていく。ただある程度のところで頭打ちになる。そうすると目に見えた結果が見えずらくなったり、今までのやり方が通用しなくなったりしてきて、スランプということになる。ただその苦しい時期にこそ、継続してやり続ける忍耐が問われる。がんばってはいけない。うまく力を抜いて、今自分のできることを最低限でもいいからやり続ける。するといつのまにやら、またうまくいきだす。言葉にすると簡単だが、実行するのを難しい。彼はその日常での感覚、今自分の置かれた心理状況や体調などを細かく感じ取りながら、日々の生活をいかにパフォーマンス豊かに生きていけるかを常に意識しているように思われる。自己管理という言葉で言い表すと小難しくなるが、なんてことはない、野菜を食べろとか体を温めろとか換気をしろなど、昔オカンの言っていたような些細なこと。だがその些細なことが、精一杯背伸びをした人間の足元を支える地盤であり、人がどれだけ優秀になろうとも、所詮はどこにでもいる、何億という数のうちのひとりでしかない。自惚れと謙遜は地に足がついてこそ説得力がある。彼の生き方、生活にはそれがある。